“共和国”はグローバル化を超えられるか

“共和国”はグローバル化を超えられるか (平凡社新書)

“共和国”はグローバル化を超えられるか (平凡社新書)

日本人二人とフランス人一人のそれぞれの論説と質疑応答付きの講演採録とで構成。印象としては書題ほどには踏み込んでおらず、テーマ提議のさわりといった感じ。それにしても革命から成った国というものは、こうまで論理に拠らないと立ち行かないものかと思ったのは、イスラム教徒の女生徒のスカーフ様の校内着用についての本国における論戦にまつわる箇所。プライベートではないパブリックゾーンにおいて、宗教色をもちこむのがご法度だという基本ルールが、こうまで厳密に施行されるとは思っていなかった。宗教はプライベートの領域だという自分の感覚がズレていたのかもしれないが。いや、信仰の自由は公共ルールに勝るという日本国憲法の解釈ないしはそれがグローバルなものであると誤解していたのかもしれない。…反面、文化や教養に対する擁護は手厚く自然なものが感じられて、その点はかの国がうらやましい。共和国とは、国民がつくるもの。対して日本においては、国民とは自然にそう生まれているもの、という意識である…といった感じの指摘には考えさせられるものがあった。自分は、そこから一歩踏み出していくべきだと思う。その際には、お手本とすべきはグローバリズムと呼ばれて婉曲に表現された商業主義よりも、それぞれ固有の文化や成り立ちからくる教訓を根本に据える共和国の思想寄りであってほしい。