鱗粉薬[増補改定版]

鱗粉薬

鱗粉薬

青林堂版との大きな違いは、増補分(描きおろし含む「水海」全三話分と千野帽子による解説エッセイ)をのぞけばほとんど無いが、旧版と新版では作者あとがきの内容および描きおろしカット三点がそれぞれすべて違う(少女キャラの顔があきらかに90年代調から00年代風へとギャル色が増してる!)。あとは「ミラースクライング」と「ミラースクライングII」が連続して配置されたのと見開きデザインだった目次が1ページ分に変更されたというぐらい。装丁はソフトカバーとなり開きやすさが増した。外装カバーも旧版は文学性を意識した一般書籍に近いデザインだったが、今回はカラー描きおろしイラスト。実物を手に取ると分かるが、その上に特殊印刷で水の紋様が型押しされている。本文は、紙質の違いか青校指示の違いなのか旧版より印刷が薄め。私は旧版のにじみも多少あるような線の太さにより立体感を持って思いいれがあるけど、現在の作者の透明感や清涼感を重視した画風には今回の印刷の方が適正であるとも言える気もする。…しかし「水海」完結編では、ヒロインの顔がずいぶんと幅広型になりキャラの表情全体がおおらかで開けっぴろげになっているのに驚き(温暖化による空気乾燥の変化が作者の住まう北陸地方にまで広がっていることとの関連を妄想した。劇中表現のようにまさに環境の推移を自らの心に反射させ、更に紙上に写し取る作風の顕現…)津野作品の最新のトレンドはラテン系、かなと。