密会

密会 (新潮クレスト・ブックス)

密会 (新潮クレスト・ブックス)

現役最高の英語圏短編作家と評されるウィリアム・トレヴァーの男女関係の機微をテーマとした短編集。凡庸な状況設定も多いものの、細部描写のさりげなさの中に技巧を凝らすことでかすかな違和感のようなものを読者に与えるという渋さが持ち味…かな。実をいうとまだよく分からない。テーマの持ち方としては日本でいえば向田邦子の小説に似ているような気もするけど、こちらの方が表面上は乾いている印象。収録作の中では、ページが進むうちに男の隠された卑しさが染み出てくる様子がどこか小気味いい「夜の外出」、孤独な偏執気質の男のほんのひと時の癒しが切ない「路上で」、そしてミステリ的仕掛けが最後に実を結んで空しさと救いの両方を同時に呼び起こす「孤独」が特に印象が強い。