雷句誠が原稿紛失問題で小学館を提訴

原告ブログを読みましたが、当事者同士の継続的な関係性が背後にあると同時に漫画家と編集部との構造性の問題でもあるなと。これまでオモテに出にくかった側面をこうして引っ張り出すことには意義があるんじゃないかと感じるとともに、ストレスフルな現場を具体的に垣間見ることで、自分の雑誌感想エントリの(これまであったであろう)安易なちゃかし姿勢を見直したくもなったり。ところで吾妻ひでおの『失踪日記』(イースト・プレス)をふと読み返してみたら、少年漫画誌で連載していたころのエピソードで各編集部との付き合いを描写しているのだけど、秋田書店の編集者たちが酒が入ってから作者の仕事ぶりを罵倒している(いわゆる無礼講状態かと)のと比べて、小学館週刊少年サンデーでの担当は半分抜き打ちのような感じで来訪して原稿が電話打ち合わせで聞いたより進んでないと見るや「出来てないじゃないかよ ダマしやがったな ふざけやがってボケ 早く描け!!」と人格が急に変わる描写(P128〜129)がされており、吾妻氏も当時は相当肝を冷やしたみたいでっせ。…サンデー編集部はもしかしたら特に雰囲気がよくないところなのかもよ。とはいえ、たとえば冨樫義博は『HUNTER×HUNTER』の原稿が上がったら床に放り投げてそれを担当が拾って持って帰るという噂記事もあったらしいけど、そういった類の話にもこれからは容易に背後関係が透けてみえてきて、弾むような楽しげな誌面とのあまりのギャップに慄然とした感触も付け加わるかもしれませんなあ。世の中、調和した場ってなかなかないもんだなあ…