ビッグコミックにちばてつや新作読切掲載

「赤い虫」というタイトルで新人時代(二十歳ぐらい)に運動不足とストレスで神経症を患ったけれど、キャッチボールがきっかけとなって克服したという体験を描いているんだけど、これが御大系読切としては破格といっていいほど面白かった。復興期の東京下町のなんとはなしに活気のある空気が伝わってくるし、なによりおそらく本人自身が描いてると思われる(具体的な根拠はないんだけどね)線が今でもいきいきしているのに驚きましたわ。週刊漫画黎明期に活躍した漫画家の、あの天性のまろみあるペンタッチは新しいセンスを取り入れるのに汲々とせざるを得ない今の漫画家にはない魅力ですね。本編の描写を見ていると、どうもほとんど下書きなしでペン入れしているようでもあるし、作家の数が少なくて激しい量産を求められていた(その追い詰められた空気は本編そのものに強く漂っていてこちらも印象があざやか)事情もあってかはたまたモデルとして参考にする媒体がなかったというフロンティアな状況のせいなのか、とにかく自分自身の直観を頼りに自由に描けていた点では、今よりも強い中毒性のある仕事だったんじゃないかなあとか。あと、もちろん弟のあきお氏も出ているちば家の様子がありありと目に浮かぶようだったのもポイント。お母さんが原稿取りにきた編集者と卓を挟んでベタ入れしてたりする。(ところで今wikipeって知ったけど漫画原作業の七三太朗は末弟にあたるそうで。知らなかったー)