ナツメグの味

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)

ジョン・コリアの作風がよく分かる一冊。洒落を解した粋な訳が良いです。ハリウッドで仕事をしていた人らしく、往年のモノクロ無声映画のように序々にBGMと展開のテンポが上がっていき最後はジャンジャン!と切れよくあっさりと幕が落とされるような読後感が多い。それとは別な味わいだけど『宵待草』(デパートに潜む話ということでこれより前に読んだ松本雪子の短編漫画を思い出した)や『夜だ! 青春だ! パリだ! 見ろ、月も出てる!』、『葦毛の馬の美女』での形容にも映像的な典雅さがふんぷんと感じられるし、具体的に語りすぎないことで効果を上げている『ひめやかに甲虫は歩む』や『船から落ちた男』もなんともシビれる。とにかく後半に特に傑作が固まって構成されているので要注意。