少女コゼット#52(終)

「銀の燭台」:この期に及んでミリエル司教に拾われた時の回想?これもう三、四回目だろと一瞬思ったけど、フィルムは使いまわしていても語り部の心情描写や新規部分の追加(今回だと聞かれてもないのにせっぱつまって前科者の黄色い旅券を差し出すヴァルジャンというカットがめちゃくちゃ印象的)によってその都度ニュアンスを変えてきているし、また全編の始着点としての重要性を示す必要があったというシリーズ構成の余裕ある贅沢さには、久しぶりに長さに見合う濃い一年枠を見せてもらったなと。勢いで泣かされることは結構あるけど、しみじみ泣ける最終回というのはそうあるものではない。本当に心洗われる良作を見せてもらった。原作は信仰心に娯楽性をまぶして教養のさほどない民衆を教化しようとした狙いがあったようだけど、いくつかの設定のエグみを消去して子供向けに仕立てつつ、革命の逡巡や少女キャラをロリータ趣味的に描くという大人向けも盛り込んだある種キメラ的名作劇場という企画がうまく本来のテイストにそぐう面があったということかとも思う。ところで数分にもわたるエピローグ部では特にマブーフ老人の庭で水を撒く可憐なエポニーヌというセレクトが嬉しかった。彼女の死に場所に花豊かであれ。