残酷な童話

残酷な童話 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

残酷な童話 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

早川書房の異色作家短編集で知った作家ボウモント。38歳で死んだ夭折の人だが、こうしていくつか作品を読んでみて「ああ、若書きのまま終わった人でもあるんだな」と感じた。後を長く引く叙情性には強い個性を感じるものの、娯楽小説としての踏み込みがもう一歩足りてない印象もちらほら。どちらかといえば先に読んだ「夜の旅その他の旅」の諸収録作の方が好みだったし、客観的にみて完成度も高かったように思う。さて今回の収録作でいい感じだったのは後味の悪さが哀しげな雰囲気で和らげられている『残酷な童話』、疎外された者の深い孤独が切ない『昨夜は雨』、単純な悪魔取引譚としてめずらしく軽妙な『犬の毛』あたり。