オデッサ・ファイル('74/英・西独)

F・フォーサイスの原作は未読だけど、この映画の終盤に用意されている主人公の動機にまつわるサプライズは鮮烈だったなあ。ナチス残党狩りモチーフから予想されるありがちなテーマががらりと崩されて、残るのはもっと一般的な義憤、ないしは単純なエンターテイメント性。意識的にクラシカルな構図で撮られたシーン(印刷所の格闘にて顕著)といい、よく計算された類の作品に思えた。台詞や演技に潜まされた伏線がこころにくくてねえ。あと主演のジョン・ヴォイト(かなりゲルマン人っぽいルックス。アンジェリーナ・ジョリーの父だそうで)の変装姿が見事。雰囲気まで変わってまさしく別人みたいだった。そして内容で最も印象に残ったのは、ナチスロマン主義の醜いしっぽであると描いていた点と戦後ドイツでナチス時代がなかばタブーとなっていたその空気の再現。