前に出た「
スペシャリストの帽子」よりも、作者の意図が明確に示されているような印象がある(単に読み手であるこちらが作風に慣れただけかもしれないけど)。大体どれも面白く、設定にバラエティもあるけど、完成度が最も高いのは『ザ・ホルト
ラク』かな。割とふつうの冴えないコンビ二店員を主人公に、上昇志向があるのか投げやりなのか分からないパジャマ常用トルコ系先輩と年齢不詳気味な動物保護施設女性職員というゆるい三角関係のキャラ配置が絶妙だし、世界の果てのような場所でゾンビ相手の商売の可能性をはかるという空しさと楽観の入り混じり様が風刺的で読みやすいと思う。表題作も視聴者を煙にまく連続ドラマと思春期少年の妄想世界が交差するア
イデアの活かしぶりがリアルだけど、ちょっと紙数が多すぎると感じた。『妖虗のハンドバッグ』は祖母のキャ
ラクターが秀逸。たぶん「長靴を履いた猫」の
本歌取りである『猫の皮』もこれまでにないリンクの作風を知れて面白かった。しかしこの人の描く
アメリカ人の生活ほど、等身大にみえるというか親近感を覚えるのはそう見当たらないね。これからも読み続けたい作家です。