破局

破局 (異色作家短篇集)

破局 (異色作家短篇集)

ヒッチコック映画「レベッカ」の原作者の長めな短編を6つ収録。どれも外れがないけど個人的ベストは『皇女』かな。特に無理解というか無知な第三者から語られるヒロインの兄の危難を前にした気高さを表現した趣向に感じいった。ふつうに綴れば陳腐な寓意小説となるところを、巧みに婉曲に仕上げていると思う。他5編も、予感を当初から漂わせながら、破局の瞬間には控えめながら跡を引く哀切さがかっちりと。しかし『あおがい』の他者の反応と自意識評価とがまったく乖離してしまっている女主人公の語りぶりはなんとももの悲しいなあ。桐野夏生の「グロテスク」を読んだ時を思い出した。