「山賊の娘ローニャ」第15話『はてしない争い(前編)』

ローニャとすっかり親友になった敵対グループの息子ビルクが、ローニャの父が頭領を勤める山賊たちに、仲間の怪我の報復として殴られた末に捉われるという現代の児童保護の観点からすると非常にショッキングなエピソード。盛り上がる山賊たちの群れに隠れて最初は見えない縛られ身動きもできないビルクが、ローニャの目に入るまでのシークエンスが少女の視点として秀逸に描写されていて思い出しても動悸が起こってくる。その瞬間、ローニャにとって父と仲間は相対的な『他者』の面をむき出しにする事となり、彼女自身が父たちからそう見なされる可能性が立ち上がる。ローニャに寄り添うのは、女である母と、隠遁者である老人だけで、これまで楽しさを分かち合ってきた家族の中の分断が一挙に浮かび上がるというリアルな関係性を正面から提示してきた、商業性の薄いNHKならではの内容になっていた。

郵便局と蛇

郵便局と蛇: A・E・コッパード短篇集 (ちくま文庫)

郵便局と蛇: A・E・コッパード短篇集 (ちくま文庫)

表題作はユーモラスで絵画的な詩のよう。それでいて物語の導入部を読んだような想像力への刺激を受ける。此岸と彼岸への往来が激しい作家で、地上の出来事のやりきれなさを淡々と描いてみせたと思えば、天上の奇跡をさらりと(それでいて鮮烈に)提示してくる。その双方が、同等の覚めて突き放したような距離感から立ち上がってくる。作品の数を読み込めば読み込んでいくほど、謎めいていく不思議なコッパードの短編群。