見えない都市

見えない都市 (河出文庫)

見えない都市 (河出文庫)

旅人が逗留先で見出すのは、過去に自分が選ぶことのなかった道の先のもうひとりの自分。それを見つけることにより、自分が持っていないもの、それ以上に自分が現在持ち得ているものとを両方確認することができる… 目的のない旅に対してこれまでで最高に適切な表現をこの連作小説からもらった。縦に、横に、斜めに関係しあう短編のタペストリー。日本語翻訳がこの上なく美しくてほとんど詩集を読んでいるのと変わらない強度を感じる。最終章、抽象の実験思考は現実への鋭い一矢と化す。会話の攻守が常に分からない劇中のチンギス・ハーンマルコ・ポーロの関係のように。