パンドラの少女

パンドラの少女

パンドラの少女

脳をキノコに寄生されて誕生するゾンビの描写がステレオタイプでなく、かつ行動の規則性に説得力があるのでそこで興ざめせずに、少ない主要登場人物間のドラマや廃墟となったロンドン市街や周辺地の状景描写に没頭することができる。情報も物資も乏しいまま逃避行をする即席チームの五人は性別も年代もバラバラで、そこでの流動的な力学はリアリティがあり、それぞれに親近感が持てる。特に大人でも子どもでもない年代の赤毛ギャラガ一等兵の人物像が印象的。ポスト・アポカリプスとしての着地点はなかなかに絶妙で、哲学的にも感情主義にも傾いていないあたりが自分の好みに合った。