ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS- ('16/監督:熊切和嘉)

かつては経済の繁栄からくる熱気を持っていたであろう東京も、異邦難民からの目、そして日本人自身からも冬の弱い陽射しに薄い影を落とす生気のなさが目立つ。ロケスケジュールの都合もあっただろうが、自分にはこの映画のコンセプトがそう見えるのだ。そしてクライマックスの場は、現在の日本のひびわれた光景の原点ともいえる阪神大震災の起こった場所、神戸。
ひと気のない商店街、なぜか潰れない洋品店が隠れ蓑となっているそこは、不法滞在外国人たちの地下銀行である。設定単体はユーモラスで胸躍るものがあるが、そこで行われる銃撃戦は、マイノリティ同士の喰い合い。何に昇華もできないむき出しの生のあがき、虚しい面子の張り合いでしかない。そこで叫ばれる主人公の「ちゃんと裁いてやる!」という言葉に妙に救われた気持ちになる。警察に護られ、警察に捕まることすら許されない人々の寄る辺なさを救済しようとする試み。祈りにも似た試みが今現在この国にもっとも必要なのかもしないと感じた。普段は積極的には観ないアウトロー・バイオレンス作だったが、観てよかったと思っている。また時期を連続させたドラマシリーズとやや角度を変えた趣向も良く、その点をTVCMでアピールできてなかったのは勿体無い。