黄金時代

黄金時代

黄金時代

とある島を訪れた男の回想記という体の長編小説。章はこまかく分かれている。文化風俗や地理の描写が主だった前半とくらべると、書籍内書籍に多くページが割かれた後半はぐっと読み進む速度が上がった。しかし双方とも、文字がオブジェと化し、逆にありふれた事物がとつぜんに文章として意味を表してくるという相反する現象に代表されるような、無の中の有、時間軸が意味を無くした世界の逆説的な可能性の無限についての記述なのだ。カバー挿画と合わせて、波と風と光とが吹きぬけるような印象を受けた。