オブリビオン('13米、露/監督:ジョセフ・コジンスキー)

謎の異星人との最終決戦によって壊滅的に荒廃して人が棲めなくなった地球。そこで資源プラント保全要員として任務に付く主人公(配役されたトム・クルーズの正統派二枚目ぶりが製作コンセプトによく合っている)に、心揺さぶられる出会いが訪れる…という出だし。ハリウッドらしさとそこからの逸脱とのバランスが非常に良い作品。アイデアとしてはP.K.ディック(ちょうどThe Dark-Haired Girlもいるし)へのオマージュを感じ、ルックスとしては80年代黄金期のアメリカ異星SF映画へのパスティーシュが強い。つまり、とても端整で王道のSF映画で、序盤そこにまず驚いた。登場人物も必要最小限、派手な爆発シーンのある戦闘場面も尺全体からするとせいぜい3割ほどという按配も、上品な印象の一因に思う。ところで始まりと終わりとのそれぞれのシーンでは、色彩と質感とにロケーションの真逆といっていい違いがある。だが、どちらも同じぐらいに美しかった。特に雲上に居住区がある主人公の駐在基地からの眺めの彼岸のような幻想感といったら。あれを観られただけでも映画館まで行った価値はあった。