槙島の挑戦により狡噛の肉体的ダメージと朱の精神的ダメージという二重の痛手を公安部は負う。前者の大きな代償でもって得た勝利が、後者の思いがけない局面からの敗北によって暗転するスピーディーで濃密なドラマツルギーは、第一部の終幕にふさわしいインパクトだった。意味もなく手慰みに人質であるユキの髪をかみそりで削ぐ槙島の不気味さが忘れがたい。あの感触は独特で、削がれてる方は気持ち悪いんだよね… 迷いに迷ったすえに、実弾が装填されたライフル銃を撃つ朱の手つきの覚束なさ(しかも片手で)のリアルさにもいたたまれないものがあった。あれは、なまじ撃てない場合よりも心理的に残酷な描写だったと思う。
