シニカル・ヒステリー・アワー

シニカル・ヒステリー・アワー (第6巻) (白泉社文庫)

シニカル・ヒステリー・アワー (第6巻) (白泉社文庫)

機会あって、部分的に読んでいたこの作品の単行本完結巻を手に取ることができた。このユーモア漫画の主人公は、プライドが実像と見合わない高さゆえに我の強い行動をみせることが多く、しかしその客観的事実を頑として認めようとしないツネコちゃんだ。しかし、最終巻の後半ではストーリーの中心となるのは突如クラスの転校生としてツネコやキリコ(ツネコの親友であり観察者。作者の分身と思われる)たちの前に現れるナニワちゃん。"完全天然ふしぎちゃんキャラ"である彼女は、一見理由がわからないままにイイ女にもてまくる父親(実は世界的に評価されているアーティスト)ともども、これまでの世界観ギリギリのラインでもって抜群の好感度を読者に与える。そして消えていく主人公だったはずのツネコちゃんの影。最終エピソードでは、偶然から超有名プロデューサーに見出されたことにより銀幕デビューを果たしたナニワちゃんの出演映画を、ツネコやキリコがクラスメート揃って観にいく展開で幕を閉じる。その直前、初潮を迎えてやけにおとなしくなったツネコちゃん。その姿を、特に感慨もなく隣で淡々と見守り続けるキリコちゃん。誰もが輝く原石である「個性」を夢見ることができた時代は終わり、厳然たる評価が容赦なくくだされる生来の「格差」の透けた時代が、すぐそこまで来ていた。そう2012年の今の自分には感じられて、初版日付の90年代半ばを示す数字とともに、しばし感傷にふけった。