I[アイ]

I【アイ】 第1集 (IKKI COMIX)

I【アイ】 第1集 (IKKI COMIX)

第1話を掲載誌で読んで以来手をつけた形だけど、思いもよらない方向(打ち捨てられた子供が世間へ復讐するピカレスクものかと…)へ展開されていた点もふくめて非常に面白かった。前作「かむろば村へ」よりもシリアス性が強いがコメディラインもひかえめに残されており、そのさらに以前に描かれた「Sink」と同じオカルトホラーの不穏さも濃密に漂う。いわば、東北カントリー・ロードムービー風漫画。ギャグマンガでヒットを飛ばしつつも自我から浮遊した感性をたれながすことに耐えきれなかったといういがらしみきおにしか描けない作品だ。この漫画のキモはダブル主人公制であること。かたや神がかり存在である事を示しつづけ、穢れと浄らかさの双極の反応を他者に起こし続ける異形の者、かたや地域で唯一の医者の家に生まれ容姿はじめ何不自由なく育ちながらもなぜか前者と道を同じくする普通の権化。印象は確かに偏在するのに手でとらえられず目にはみえないものを追うこの物語の決着点はむしろ後者が担っている。そのとき、オウム真理教が起こした一連の事件以来、日本社会でわだかまっていた宗教という概念への理解モラトリアム空間に、ひとつの突破口が啓く。そんな予感がする。