7人のシェイクスピア

7人のシェイクスピア 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

7人のシェイクスピア 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

現在、第3巻まで刊行。
シェイクスピアがロンドンに渡った時期の、記録に残らなかった七年。「失われた年月」(The Lost Years)と呼ばれるその空白から想像を膨らませての大胆な歴史劇で、頁を繰る手がつい先へ先へと進む。中国からの移民や旧教徒(カトリック)への弾圧に魔女狩りといった時代背景から、各商業ギルドが玄人はだしな演劇で競い合っていたというちょっとした社会風俗といったパースの異なるモチーフを組み合わせた展開は、ストレートに飽きさせない。劇作という題材ゆえに描写が避けられない詩的才能という漫画において描写が難しそうな部分も、当時の人々の感じ方をドラマチックに演出して見せる事で効果を上げており、思わず一度「ソネット集」を読んでみようかという気にすらさせられる。
ところでひとつ、次巻以降で明らかになるのが殊に待たれる設定の疑惑がある。それは、ウィリアム・シェイクスピアという名前を持つキャラクターが同性愛者ではないかという点。劇中においてあからさまに指摘されているセリフがあるわけではないのだが、もしその想像が的中していれば、男性向け雑誌のストーリー漫画で主人公がゲイであるという相当に画期的な例になると思うのだが。