鋼の錬金術師FA 放映終了

5クールをも費やしたシリーズ構成は、正直な感触としては1クール分ぐらいシェイプしておいても問題ないのではと思わないでもないけど、1クールアニメも多い今のご時勢、やはり貴重で贅沢な印象はある。個人的な嗜好のためか、アクション面でのめり込んだ覚えはあまりないが、それでもエフェクト込みの作画全般の水準を高く保ったのは定評のあるBONES制作ならでは。真っ直ぐゆえに平板になりがちなキャラクター描写の趣向のバランスの取り方にしても、エドとアル兄弟、その父であるホーエンハイムという主人公二軸構成を徐々に紡いでいく事で幅広い年齢層の視聴者へのアプローチに挑戦していたと思うし、最終二話ではその試みがじんわりと花開いていたようで、自分でも思いのほか感動した。欲望の最たる被害者である序盤の幼女への鎮魂をエドとアル両者が別々に口にしていた演出の細やかさは、ホーエンハイムへの追悼には発揮されていなかったのは疑問に思ったが、それも二世代の表層的な断絶をあえて通すことで、両者を同一人物のバラレルな道程とその補償と捉える脚本上の意思とするのは可能。「賢者の石」をあえて用いる途を選択したマスタング、生来の“力”を替わりに差し出したエドワードという対比を描くことで大団円に幅を持たしたあたりも、悠々たるものだった。全体的な印象としては、えぐみのある描写こそ在ったもののまろやかさが漂うということで、かつてのハウス名作劇場に近い感触があると思う。