「東のエデン」全11話視聴完了

滝沢朗(を名乗る青年)の自分探しと、森美咲の白馬の王子様探し、ニートたちの救世主探しとが絡み合った物語。「王さまのいない国の王子さま」になる事を滝沢が引き受ける決意をするところでTVシリーズはあえて余韻を残さず幕を落とす。指揮系統の中心が空洞な国で次期王位継承者になるということは、何も得ず何も為さないと同義だし、実際セレソンに選ばれて滝沢が行ったのは他のセレソンたちの破壊行動を止めた事だけで、自分からはなんら企画を建てていない(あるいはその性質こそが主催者に期待された点なのかもしれないが)。これこそが製作者が見出した唯一の現実的決着点だったという事だろう。モラトリアムを続けるしかない国。それはそれでいいのかもしれない。そこでの最高のグッド・マインド・ガイは、ただただ清々しさが他者の心を動かす観葉植物のような、それこそ滝沢朗のような男とされるのだろう。咲は、滝沢の存在を承認する事により義兄に抱くエレクトラ・コンプレックスから解放され、ニートたちは、男性性の達成に振り回されない滝沢のような英雄像を等身大に抱ければ、幻のエディプス・コンプレックスから自由になれる。あの展開的には淡白すぎて肩透かしなクライマックスに、自分が妙に爽快感を抱いたのは、シリーズ構成の成功をそこに見たからだと思う。
追記その1:映画版ではまた違うアプローチが為されているらしい。レンタル観賞できる時が楽しみ。
追記その2:遊佐浩二演じる、「もう百億持ってる」おそらく政財界どちらかの子弟がサポーターだったらより面白いよね。というかラスボスは究極のニヒルであるこちらの方のはず。