戦う司書#23「脱獄と道具と砂漠の菫」

ハミュッツのあまりの混じりけない悪意にEDのあたりでは寒気が止まなかった。三代前の館長代行で、浮浪者として落ちぶれて行き倒れた老人・マキアの“本”をラスコールに手渡されたハミュッツに、過去の忌まわしい記憶が蘇る。…これでハミュッツのバントーラ図書館入りまでの経緯が表層的には分かったけど、各人の事情か交錯してストーリーが構成されているためか細かな部分では語られていない点は残っている。マキアが館長代行を辞して児童を監禁してまで成そうとしていた対『天国』研究の達成目標、そもそも『天国』とは何者なのか。…そういった不明な要素をさておいて、今回も地脈的に世界の不穏さが全体に満ちていて緊張感がただ事ではなかった。キャラの扱い方が容赦ないというか、たとえば廃人となりながらも強力な魔法権利を保っているチャコリーの世話をハミュッツに押し付けられたマキアの無残な晩年と現役時代の洒脱なまでの壮健ぶりとのあまりな対比。こういう幅を大きく取った描写が、たまらなく文芸調だと思う。あとはっきり台詞では語られないけど、マットの一貫してゆるぎないハミュッツへの愛を示すなにげないいたわり方がとても良い。同棲は破綻して彼女の宿業も十分に分かってるというのに、マットはほんと大した人物(その意味では「通好みじゃな」とかいっちゃうミンスはまだまだ(笑))。