戦う司書#20「弔鐘と本と死にたがりの少年」

ストーリーテリングと構成主導の印象がある作品ゆえに今まで目だった演出特化回はなかったわけだが、今回は特別。近作「キャシャーンSins」で独自の美学をつらぬいた山内重保が演出と絵コンテを担当するのだから、雰囲気が違わないわけがない。顔を映さずにカメラを下にずらしたままセリフが載せられる諸カット、作劇中心人物に特権的に付けられた挙措のこまかなブレにもにた動き、表情がわからないほどに引いたロングショットの多さ。通常のスタンダードな演出ぶりとの差もあって、なにやらぼんやりとした異化効果すら全体から漂ってくる。しかし本作の非凡なところは、終盤に向けての急展開を自然に見せるための構成演出として用いた点にある。消息の分からない無邪気なノロティ。断片的にしか伝えられない彼女の意思と行方は、バントーラ図書館が直面したつかみがたい大危機の先触れと合わせて不安のミステリーとして物語を牽引する。一番近くにいた人の考えていること、持っている力さえ測りかねていた事にようやく気付くエンリケに、今は視聴者も歩を同じくするしかない。