獣の奏者エリン#32

「大罪」:とうとう王獣を宙に自由に飛ばしてしまったエリンに対して、影のお目付け役の霧の民の男(名前度忘れした)が忠告せんがために明かす王祖ジェの真実。霧の民と真王一族は、遠くを見て霞んだかのような瞳の描き方が同一な事が示すようにもともとは似た境遇。同じように戦力として利用されたが、真王一族の歴史参入への願い方がより切実がために、獣の精神を読み兵器として操ることができる能力を大々的に活かしてしまった…という種明かし。それならば霧の民とて、とエリンが考えるはずもなく、逆にそういった理由なら自分も霧の民の掟に唯唯諾々と従おうと思うでもなく、エリンはただただ、歴史のうねりの中で“悲劇が決まってしまった本当の詳細”の在り処に気がいくのであった…といういろんな面で重層的なつくりの見ごたえのある回。今回はとにかく、人をたぶらかし(石田彰の役の王の甥に顔似てる)ながらも純粋な民への想いも持ってるらしく描かれているオファロン王の造形にリアリティがあって面白い。王になるのにまずもって必要なのは“扇動者”の素質をいかに“先導者”へと高めることかであり娘時代のジェを焚きつける言葉が、専横が行き過ぎて国を追い出されたという先のナレーションと実は矛盾していないという複雑さを、分かりやすさを損なわずに描いていたのがすばらしい。戦を終わらせ、国をまとめあげたいという気持ちに嘘はなかったであれ、エリンが直観的に感じていた悲劇の不確定要素の中に、あるいはオファロン王の策略行為があったのかも、とか。あと、オファロン王都に攻め込む直前の会話中の「この子」というセリフ、あれはたぶん王獣の事と見せかけてジェのお腹にオファロンとの子供がいたという事だよね?