初恋限定。#9

「その思い出には満開の」:原作者である河下水希は割り切って商業作品を描けている漫画家であると思うが、しかし中でもおそらくは自己投影がしやすい文系少女を視点主役とした時に演出技巧がもっとも冴えるタイプでもある(と断言する)。その意味において原作シリーズでも、今回の千倉奈央が卒業した見知らぬ先輩とともに美術室で放課後に絵を仕上げていくというエピソードは地味ながらもピカイチの完成度と印象強度を持っていた。そしてこのアニメ版においては…時制タイミングと全着彩、そして声優の演技(石田彰は登場した瞬間は「ま た 石 田 か」と思うけど演技が続く間に「やっぱり石田、彰さま最高や…!!」にフェイズするミラクル声優。)という独自の構築要素によってより鮮明繊細に生まれ変わった。いつもよりさらに多い情景描写まで手を抜いてないあたり、リソースの使い方の勘所を得てる。ところで連城先輩が千倉を抱きしめるカットって原作であったっけ? もしアニメオリジナル展開だとしたら、両想いながらも未来への夢を捨てて留まることはしなかったという意味付けがさらに深まって、実に切ない改変だということになるね。