黒執事#18

異端査察後編。何気にこれまでで最高の出来の回だったと思う。しかしアバンのあまりのおぞましさには色々びっくりしたよ。そうだよ、ゴシックジャンルの魅力っていうのはこういうもんだよね。歪んだ美にこそ真髄は宿るという。それにしたって心理的にもルックスとしても負荷インパクトは抜群な描写で、深夜アニメとはいえよくやった。種以来のMBSアニメの稀少な美点が発揮されてた。エピローグにあたるシエルの述懐(当世風なグレルに官僚的なメガネ(仮称)と違って古式ゆかしげなアンダーテイカーはさすが誘惑手法の格が違う)も渋い。だって、今回のアンジェラが示してきた魂の救済ってのは考えようによってはそんなに欺瞞でもない。なぜなら理不尽への自己解釈に至る事ができない人にとっては物事の捉え方を他者に与えてもらうしか精神安定を得る方法はないのかもしれないから。それでも、自分自身で辿る認識過程と事実の捻じ曲げとの間には近いながらも歴然とした差があるというのが今回の肝。デリケートな感覚の問題を脚本と演出の両輪でもってスマートに表現してた。あと、天使という存在が秘めるケモノ感も、ル・グィン作品(ロカノンの世界)やエンデ作品(鏡のなかの鏡)に出てくるそれの印象が強く残ってる自分には非常に納得できるものが。…人間にとっては悪魔よりもずっと理解しがたい生き物だよね、天使って。(なお悪魔をアンチ神とすれば死神はノット神。神と死神は本来別時空の存在なはず)