神霊狩#21

あらすじで言えば“新しい教祖として都を据えた大神拝霊会は水天町の女性の圧倒的な支持を集めて不気味に勢力を伸ばしつつあり、その背後には国家権力が絡む気配すら窺えた。一方、太郎たち中学生トリオを中心として鈴木や鳳、平田に猿田といった顔ぶれの即席チームが対策協議の場を神社の中にてひそかに開いていた。都が予言した「竜神」の到来の気配は台風とともに近づいている…”といったところで大詰めらしく盛り上がって(まったく接触のなかった鳳と猿田が同席する展開になろうとは)きたんだけど、その筋とは別として、少年や周囲の人々の心理の移り変わりを細々と詰め込むその姿勢にはかなり驚かされた。最終話前といったら、ふつうは話の風呂敷を畳むので精一杯だからね。太郎は母を一人の女性として見られるような健全な距離感と血縁の親愛を両立させてごく自然に振舞えるようになっているし、匡幸はメビウスの輪のように父への複雑な思いとねじれてしまった鳳への憧れに似た情欲にピリオドを打つことができた。一番変化が顕著なのは信で、言葉使いにぶっきらぼうさが取れて身構えていた険が抜け大人への不信も解けた風情。そして大人たちにまで描写は及んでおり、鳳が匡幸をすんでのところでかわせたのは博士を尊敬している真情を示すための大人の誠実さゆえだろうし、早苗が慧と同じ目線で話そうとしたのも再度此岸で生きようとする表れにみえる。それぞれが少しずつ変化を見せる中、見えない理に身勝手な意味合いを過度に付けようとする動きに牽制を加えるため、そして一人の少女を救うために混成グループが動き出す。女装潜入作戦とは、ヤマトタケル伝説ですな!