特別料理

特別料理 (異色作家短篇集)

特別料理 (異色作家短篇集)

この人もスマートな技巧家。スタンダードに異色(矛盾してるみたいだけど)な短編の表題作もいいけど、鬼引きのまま終わる『決断の時』がすごい。ここで切るのかよ!そして続きは永遠に読めないのね!! しかし不完全燃焼さは全然なくて、屈託のない男にある時訪れる変化の瞬間を描いた緊迫感はまるで聖書の一エピソードのように運命的に香りが。他は思いがけない展開をして予想の付いたオチに捻りを加えている『壁をへだてた目撃者』もかなり好き。主人公が助けようとする女性の哀しい人生が切なすぎ。『クリスマス・イヴの凶事』にしてもあり得そうな家庭断章でしみじみかつぞっとさせられるし、因果応報の小気味よさと主人公に感情移入してのスリル感が同時に味わえる印象の『君にそっくり』も面白かったなあ。