桃華月憚#15

「暦」:今回の仕上がりは地味だけどすばらしい。望月智充の真骨頂がここにあると思う。真琴は今日が昨日のくりかえしだということにただ一人気づく。それは小説の締め切りを延ばさんがために時間を操作した由美子の一時的ないたずらだったが、彼女本人から“それはデジャ・ヴュというもの。過去の出来事にとらわれずにひたすら前向きに生きればいい”と諭されて無心に納得する。なにやら含みありげな上級生のかばんから落ちた封筒に見覚えがあっても、真琴は頓着しないことにあっさり決める。そんな事にこだわっても幸せにはなれないと知っているから。…あらすじだけ抜書きしてみるとなにやらまこちゃんが単なる頭を使うのが嫌いな子みたいですが、これまでの(時間軸からいえばそれ以後の)エピソードとの対比で、それがジュナの強い想いの力に支配された上津未原においてはごくごく普通な態度であることが分かる。と同時に、いつかは必ず時計の針が正常に進むことを心のどこかで信じるかの地の人々なりの前向きさがほんのりと浮かび上がってくる。なぜなら、桃香たちは近い内に決断をくだすことになるのだから。結局のところ刹那は二度とはない刹那であって、たとえ似たような一日があったように感じてもそれでもやはり『今日』というのは掛け替えのないものである。だからこそ上津未原の人々は些細な異事には動揺しないのだろう。もたらされた影響下で充実して生きることに専念しているから。非日常の題材を描きつつも、日常の大切さをあぶりだすそのさりげなさ。望月氏の近作「絶対少年」よりも更にデリケートに表現されているのではないでしょうか。ああ、それにしてもまこちゃんの吹く和笛が実に実に美しかった! 特に番組終了時の提供テロップ時に流れるメロディに転調するあたりにぞくぞくした。あと作画が今回ことに整ってますね。まこちゃんかわいかったし、春彦おとこまえ。それとそれと今回章子役の小林ゆうの演技がはっちゃけていてすばらしかった。取り巻き二人が声を合わせて哄笑したのも最高。