2024年4月に読んだ本

魔法少女はなぜ世界を救えなかったのか?

商業主義によって着飾された魔法少女たちのシスターフッド。その可能性と頓挫を韓国におけるアニメや小説の受容の歴史とともに追う。少女向けアニメの主人公たちはなぜあんなに生活に余裕がある(しかもそれが当然のように描写されている)のか?という疑問は自分も数十年来抱えていたので、商業主義と少女アニメについての関係性を直視するテキストを読めたのは気持ちの落としどころを得た。

アーサー王宮廷のヤンキー

これは、異世界転生の元祖ではないか!という軽快な読み心地と、封建社会の犠牲となる下層民衆の個別な苦悩が幾度も表れるギャップに、トウェインのプロ意識と啓蒙思想のシーソー運動を見た思い。アーサー王のキャラクターとしての影が薄いのと、希代の魔術師マーリンが薄気味悪くて嫌味たらしい老人として描かれているのが印象的。転生して再度現世に戻ってきたあとの主人公の姿が侘しいのには人生の機微を感じる。


ゼッタイ!芥川賞受賞宣言~新感覚文豪ゲームブック

文芸愛好家の美女を振り返らせたい下心と、就職活動から現実逃避したいという動機によって芥川賞受賞作家というポジションを目指す“あなた”に読者はなり、展開を選ぶことによりマルチエンディングを迎えることができる往年のゲームブックのパロディにして復権を実行した小説。最初はゲームブックとして遊び、その後は通常の小説として読み通した。特に編集者とのやりとりの中で不確実性と非誠実さの間に心を迷わせ憤らせるデティールにリアルさを感じる。