モンテ・クリスト

翻案は独自性が高いが、とはいっても原典を大胆に脚色したという方向性ではなく、つまり設定を変更したというよりあくまで解釈を深めたという点が、原作小説へのリスペクトを感じられる。主人公モンテ・クリストは過酷で理不尽な拷問と投獄により人格や容姿が変貌したという設定だが、60年代石森漫画の流れを汲みながらセンスを先鋭させていっている熊谷氏の絵柄で、その見分けは付くようで付かない。そこにかえってマンガという手法の強みが付くという逆説の魅力が放たれており、人生全体へのシニカルさと未来へ希望を抱く事への価値とが並立した世界観といい、とにかく感覚的にまず惹かれる作品。続刊が楽しみ。