「アクエリオンEVOL」第23話『神話センリツ』

ギャグとシリアスが渾然とする作品コンセプトをもっとも体現していたキャラクターであるシュレードが仲間のために血路を拓いて(まだ確定ではないものの)命を散らす回。と同時に、前世や前々世からの因縁も明かされ、さらにはミカゲがゼシカの身体をのっとるサブエピソードまで詰め込まれるが、それらの並行ぶりに散漫さが無く、また作画も前回の不調から美麗さが戻ったこともあってかなり楽しめた。特に、ミカゲがゼシカの唇を奪うシーンにはなぜか背徳感に近いものがある。それにしても、以前にはキャラクターの所作がバレエのようだと評したことがあるが、今回のステージ設計のような背景美術に、羊皮紙の本やそこに刻まれる音符といったガジェットの用い方、卑近な感情を昇華へと持っていく心理描写を見ていると、むしろより包括的なジャンルであるオペラ劇の雰囲気に近いように思えてきた。やりたい事を脚本と演出で力を合わせて奔放にやるというボルテージがシリーズ前半とくらべて落ち気味だった中盤を、巻き返すこれからのクライマックスに期待。…ところで前シリーズの主人公アポロが、アポロニアスの生まれ変わりではなく翅犬ポロンの魂からの転生だったというタネ明かしは、たしか今回が初出のはず。思い切った設定を持ってくるものだと驚いた。アポロニアスはもはや人間の姿で地上に現れることはないという事なんだろうか。