諸星大二郎の人気シリーズをアレンジした伝奇ホラー。主人公の
稗田礼二郎が原典よりも
アイデンティティの悩みを抱えている風だったりするのが当世風(メガネキャラ化しているのもその演出の一環か)。反面、古文書から事件を通して観察することで序々にあきらかになっていく情念の籠もった過酷な歴史というモチーフからはきちんとしたリスペクトが感じられ、また諸星漫画の特徴のひとつでもある“
もののあはれ”が沁みる描写も入っており(“本物の鬼踊り”は名シーン)、カヴァー企画としてはかなり良い出来の部類。続編が出てほしいと思う。