「ユリ熊嵐」全12話視聴完了

当初はソフトなレズビアンものとして、甘い雰囲気のコメディ基調でまとめるのかと予測していたが、あるいは今期もっともストレートにアクチュアリティを出してきた作品となった。
『透明な嵐』の渦中に置かれないためには「友達」を大切にして「空気を読み」、けがれなき『ユリ』の花としてお互いを承認していかねばならない。それは愛に似た関係だが、閉鎖された空間においては愛は実のところ窒息してしまい、透明な存在に自分を留めたままでは誰にも見つけてもらうことはできない。しかし例外はどこででも起こるもので、愛に飢えて叫ぶことを恐れない者たちは『熊』と呼ばれ『断絶の壁』の向こうへと隔離された。そこは生と死の境い目が限りなく近い、何が起こるか分からない世界。
本当の友達とは、かりそめの幸福へと引っ張りあげてくれる行為から生まれるものではなく、それまでの自分を脱ぎ捨ててともに未知の世界へと飛び込んでくれる相手。
どこかもの悲しくさびしいが、それ以上に可能性の広さを感じさせてくれる作品だった。
現代社会を寓意した生々しさを、糖衣で丹念にデコレートしたこの上なく美しい世界観に、どのエピソードもうっとりさせられる。
愛は弾丸であり、その衝撃は誰をも貫く。本作の英文タイトルは『LOVE BULLET』である。