青い文学シリーズ「人間失格」

浅香守生監督らしい、優しいヒューマニズム視点のほの暖かさが感じられる丁寧な演出。夏の気の迷いから始まった葉チャンの転落は冬に頂点を迎える。もはやそこに逃げ場はなかった。悪友・堀木が世間一般を代表したかのように「人が人でなくなる食い合いの時代がくる」と言い残して徴兵に応じていき、反面、葉蔵を受け入れながらも距離を置いていたカフェの女将が葉蔵が女を惹きつけた理由を「女の弱さに自らを置いていたから」と短く発する。時代背景の描写を端的かつ断片的に挿れることで原作よりも主人公の立場に接近しつつ、サブキャラクターたちの行動理念にも解釈の光を入れた、四話分用いた意味のある仕上がり。八割方、実写作品でも再現可能な堅実な絵コンテ仕事もかえって印象に残った。