2022年8月に読んだ本

エドワード・ホッパー作品集

ホッパーの画家としての出発点は、フランス絵画をはじめとして伝統を長く保ってきたヨーロッパへの憧れがにじみ出る印象派の影響の強い作風からだった。しかし(建国から浅い歴史の自国アメリカへのまなざしを新たに構築しようとしていた)当時の画壇からの反応は冴えず、ホッパーは自らアートシーンが求めていたものへと画題やタッチをシフトさせる。ホッパーの描くアメリカの情景の静穏さにはそんな背景があったのかと理解が深まった。代表作の図版よりもむしろテクストの方の印象が強い。
自分はホッパーの絵では、視点をやや遠目に離した(というかどこから眺めた構図なのか分からない窃視的な)室内に居る人物画が好きだったが、過ぎ去る車窓から淡々と眺めた片田舎の一軒家ーそれこそ同時代のワイエスのモチーフと重複するために比較が可能なーの侘しさを切り取った、車旅行の趣味からくる作品群の魅力にも少し注目するようになった。