2022年7月に観た映画

リコリス・ピザ ('21 アメリカ/監督:ポール・トーマス・アンダーソン)

美形でもなく不細工でもない歳の差カップル。少年の方はふわふわしたステージ志向の片親育ち、女の方は教義を守ることに口うるさい信仰家庭で親姉妹と同居。このトッピングは苦いというか変な味、だけどやっぱりピザは生地とソースがおいしくてやめられない!って。そういう映画。ここまで凸凹で歪なナンセンスすれすれの構成(ブラッドリー・クーパーが早朝の街角でゴミバケツにやつあたりしながらシームレスにナンパするあたりが頂点)なのに、心がふんわりと肯定感に包まれてすべてが腑に落ちた気分で劇場を出られる。映像の天才ってほんとうにいるもんなんですね。80年代のチープでカオスすれすれの社会流行を"いまその時"として演出してくる手際の貫徹ぶりは、『横道世之介』に通ずるものがあった。若い季節、若い時代。