2022年1月に読んだ本

平家物語

小説家の古川日出男による現代訳。自分は馬がかわいそうでつらいので騎上戦よりも舳先が細い船をかち合わせる海上戦の方を重点的に読んだ。しかしなかなかどうして、痛そうというか残酷な描写も多い。それでいてやはり全体が哀調でもってなだめられていて、全ては仏心届ききらぬ情け無き地上のゆえなのですという、納得しがたいことも何とか琵琶の音で合いの手を入れて、皆で吞み込んでその証に語り継ごうやという祈りにも似たシンとした心持ちで大部を読み終えることとなる。ところで後半の構成の話だが、平家一門が主役なのに敵役である義経が兄に追い立てられるようになる様が、まるで平家の中の一員であるかのように錯覚するような趣向になっていて、そこは昔の人もなかなか文芸技巧高いやないかいと感じた。