2020年8月に読んだ本まとめ

掃除婦のための手引き書

昨年の内に読んでおかなかったことが悔やまれる一冊。自伝的な短編の数々から浮かび上がる、客観性を保つ知性、豊かな経済環境からの社交性、複数の恋愛関係が語る美貌。だのに!小説の主人公たちは酔って身体に触れてくる祖父の野卑さに耐え、シングルマザーになった後は酒屋の開店を震えた手で紙幣を握りながら待つ。世界は複雑にこんがらがりすぎ、人生は手にあまりすぎる。それでも彼女の筆致は瑞々しい。だから、地上の煉獄は終わらない。朝がグラデーションを描いて夜と交替する。喉を澄んだ空気が今日も刺す。