2019年12月に観た映画まとめ

ドクター・スリープ ('19 アメリカ/監督:マイク・フラナガン)

プロットだけを見るなら前作『シャイニング』のイメージから離れてるし、途中の山場である銃撃戦に至る心理ステップはやや不足と感じたが、メインキャラ二人の人物構築を表現する脚本とホテルに入ってからの演出は素晴らしかった。ダニーとアブラの社会の繋がりの周辺に押しやられつつ傷ついても、なお主体を持って生きようとする勇気には非常に励まされる。

 

この世界の(さらにいくつもの)片隅に ('19 監督:片渕須直)

すずのひとりの女としての暮らしと思いのデティールアップが、彼女をハブとした人々の個々を更に際立たせ、モザイクの面積はより広がり、そしてそれらは角を擦り合わせることで火種すれすれの燻りを起こす。狂気と正気、悲劇と喜劇。区別がつかず混ざり会う世界のなんと豊かで恐ろしいこと。ところで無印版ではすずのセリフだったものが今作では周作とリンに振り分けられていた箇所があった気がする。主観と客観の枠すら揺さぶってくるようだ。

 

(配信・衛星放送で視たもの)

ダージリン急行

ウェス・アンダーソン監督の持ち味であるミニチュアジオラマ感は控えめだが、寝台特急のシーンが楽しすぎて野外ロケの箇所がその分散漫に思えた。

「ボブという名の猫」

猫は世界を救う。と共に、イギリスの麻薬問題の根深さも十分に描かれた秀作。

「ルドルフといっぱいアッテナ」

3DCGアニメだが、子猫ルドルフの造形が絶妙なバランスの可愛さ。お互いの思いやりと目的意識の覚醒を年長者に教えられるテーマも自然に描かれてて良かった。

「誰も知らない」

YOU演じる母親の憎めなさ、悲劇と一時的な安定との揺さぶり効果で現実感が半端ない。あえて徹底的な無惨さを避けた監督の意図により、宙ぶらりんさが当事者意識を呼び起こす。

「貞子vs伽椰子」

まあ呪われた感がちょっとほぐされていいかもね…  劇場に足を運んでたら怒ってもいいけど(笑)。メタパロディっぽいセリフ『この人すごい無駄死にだね』は面白かったです。

ウインド・リバー

現代ネイティブアメリカンや辺境在住者の現実に思いを馳せることは出来たが映画としてのルックスはややもの足りず、ドラマシリーズの秀作回といった印象を持った。