2019年11月に読んだ本まとめ

私たち異者は

私たち異者は

私たち異者は

現代アメリカを舞台にして、社会の変容や人間関係の動きを淡々と綴る。表題作は突然オバケとなった男性と孤独な女性ふたりの奇妙な暮らし。ひなたに舞うホコリを眺める赴き。9.11以後の不安の連鎖を寓意した「平手打ち」や思春期にある異性同士の友達の水面下を映した「白い手袋」などいずれも深夜の物思いのような独特の味わい。

童子

室生犀星集 童子―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)

室生犀星集 童子―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)

近代文豪の怪談集の一冊。といっても幻想文学の色が強い短編が多い。金沢市白菊町にある犀星の育った寺院付近の雰囲気が反映した作品もいくつかあり、特にストレートな怪談である「三階の家」の舞台は犀川大橋近くに心当たりがある。逆に浅草を舞台にした「幻影の都市」はサイバーパンクの予兆さえあるカラッとした手触りで、犀星の作家としての幅の豊かさを知った。