芥川が大学で教鞭を取った時期に学生のために原語教材として編んだアンソロジーからさらに厳選した20の“奇妙な味”の短編。芥川のコメントも巻頭に紹介されており、彼の感性の先取ぶりが分かった。ブラックウッドの『スランバブル嬢の閉所恐怖症』のユーモラスさ、当時の人種差別感覚をドライに味付けたアブダラー『ささやかな忠義の行い』が特に秀逸。
チェコSF短編小説集
古典小編から始まり、現実の政治情勢を詳細に反映させた社会派の力作、メカニカルな描写とスピリチュアルが合わさったハードSFへと裾野が広がっていく。後半の充実ぶりは相当な読みごたえがあった。
文藝別冊 萩尾望都
現役最高のキャリアと実力、評価を兼ね備える萩尾望都の幼少期の様子から現在の制作の状況、同業者との交流関係や作品の変遷までを網羅した一冊。巻末に掲載された幻想短編「月蝕」が繊細と巧緻を極めて掉尾を飾る。