2018年6月に読んだ本まとめ

「最前線の映画」を読む

ネタバレ上等、むしろ教えてくださいな自分にとってはとても楽しい映画鑑賞ガイドだった。作品チョイスの、一般性とマニア色のバランスも絶妙。あまり自分語りをしない印象のある町山氏が、「哭声/コクソン」の章で自身の娘の発病時の心境を引き合いに出していたのが印象的。
夜の夢見の川
表題作は(それクトゥルフ要素いる?)と思わないでもなく、それ込みで奇妙な味わいを楽しんだ。それにしても序盤の遠泳描写には手に汗握った。他はウーマンリブから照射した寓話の『お待ち』やモータリゼーションの風合いが活かされた『ハイウェイ漂流』が鮮烈。
あまりにも真昼の恋愛
あまりにも真昼の恋愛 (韓国文学のオクリモノ)

あまりにも真昼の恋愛 (韓国文学のオクリモノ)

表題作は、左遷された男が昼休みに会社を抜け出してかつての後輩が演じる連日の舞台を観にいく。無さそうでいて人生の一時期にありえるシュール一歩手前の状況を淡々と、しかし突き放すでもない澄み切った静かな視線で描く短編の数々は、バラエティに富んでいてカラフルでさえある。すべての作品に満ちている涼やかな風に、韓国社会の流れの速さを感じた。ベストを選ぶとすれば『猫はどのようにして鍛えられるのか』。孤独な人嫌いの男が猫にだけは優しく、有償ボランティアで猫探偵を行う中で虚言癖が疑われる少年との縁が生まれる。温かいが甘くはないキム・グミ節の真骨頂。まるでメルヴィルの「代書人バートルビー」のような人物が観察される『趙衆均氏の世界』も完成度が高い。収録作すべてにあてはまる事だが後味はあくまでまろやかでしなやか。
日本人の遺伝子
日本人の持つ遺伝子と他国とのデータの比較が多く紹介されている。最新の研究知見と分かりやすさとの配分が良く読みやすい。遺伝子が後天的に変化を遂げることもあるという箇所が記憶に残った。