2018年12月に観た映画まとめ

機動戦士ガンダムNT ('18 監督:吉沢俊一)

個人的トラウマと世界情勢が等価になった内面世界をガンダムで描いた、その度胸を自分は買う。ミシェルとゾルタンは同根の存在なのだ。祭りの後始末が必ず来ると分かっていても過去を取り戻したい欲求を抑えきれない。これは正しく21世紀の心情を反映した物語、すなわちナラティブな切り口の新しいガンダムシリーズである。ギミックを何段にも重ねたメカアクションも満腹感が得られて良い。

愛と法 ('17 日・英・仏/監督:戸田ひかる)

同性愛カップルである二人の男性弁護士が営む事務所を写したドキュメンタリー。大阪弁がリズミカルに響く。アーティスト・ろくでなし子氏(お父上の人間性の高さが印象的)のわいせつ物流布罪裁判、教師君が代不起立裁判、無戸籍者問題など、不可視の領域と境界を問い続ける姿はパワフル。だがその反動の面がもっと映ってもいい気もする。

ア・ゴースト・ストーリー ('17 カナダ/監督:デヴィッド・ロウリー)

今年は(このラストシーンの余韻のためにすべてがあるのだな)というポエティック至上映画が多かった印象があるけど、この“おばけもの”は最たるもの。自然光を印象的に写したあらゆるカットは美しいし、時間遡上の仕掛けは少し凝ってたが、そもそも主演ふたりはそれぞれもっとふさわしいタイプがいたと思うんだよなあ。

ヘレディタリー 継承 ('18 アメリカ/監督:アリ・アスター)

ゴシックホラーの手法でモダンホラーの物語を描くことで、現代社会が内包する複合的な恐怖を示す。その気持ち悪さと悲しさとはずっと余韻を残す。主人公とその家族もまた平凡な愛しあう人物として登場していたから。死体の見せ方はショッキングであると同時に現実的なオブジェクトとして置かれ、日々の暮らしの皮一枚下に暗黒の淵が潜んでいる暗示を照射してくる。ほんとうに、悲しく恐ろしかった。

斬、('18 /監督:塚本晋也)

幕末、農村に下った若い侍を主人公に武力を保持する意味を問う。つまり監督の前作「野火」の姉妹編といっても過言でない(全編に渡って草が風に叫び続けている)。監督本人が演じる老練な武士の淡々として効率的な殺人術、悟っているか投げているか分からない生きざまが鮮烈。