この世界の片隅に('16/監督:片渕須直)

夕凪の美しさの裏面に爆心の叫喚が、家族の笑い声の隣に疎外の無表情が、美的感覚の背後に絶対孤独が棲んでいる。この映画では世界の片側が常に通奏低音で置かれて演出される。その徹底ぶりが画期的だったということであり、それが批評家以外の鑑賞者にも届いたということ。奇跡のような映画とは、この作品においては言い過ぎではない。