ベスト・ストーリーズII 蛇の靴

ベスト・ストーリーズII 蛇の靴

ベスト・ストーリーズII 蛇の靴

雑誌『The New Yorker』の数十年の歴史の中で掲載された中・短編小説の中から選りすぐった日本オリジナルシリーズの二冊目。都市生活の機微を洒脱に描き出す作品が多い中、巻末にもっとも長いページ数で掲載される「マル・ヌエバ」(マーク・ヘルプリン)の印象の強さに魅了された。南米を思わせる架空の独裁国家の風光明媚さと人が形作る社会の理不尽な歪つさとの、あまりに鮮やかすぎて憎みきれないコントラスト。波と風がつくる渚の水紋が無二であるように、それは文学でしか表せない。(まったくの余談ながら目的としていたジーン・ウルフの作品がたった二ページの掌編だったのには意表を突かれた…)