バーダー・マインホフ 理想の果てに('08 ドイツ・フランス・チェコ/監督:ウーリー・エデル)

ドイツ赤軍「RAF」の若者たちの軌跡をドキュメンタリー・タッチで追う。かつての大戦の最中に吹き荒れたファシズムへの反省と、冷戦構造の中で大国のエゴイズムが吹き荒れる時代背景のなか、若者が行動によって示そうとした理想が、社会に存在する避けえない夾雑物によって変質し、煮詰まっていった果てに体制側との暴力の応酬が“手段”ではなく“目的”と化していった様子が客観的に描かれている。バランスのよい視点の取り方のために、RAF中心メンバーたちが戯画化されるでもなく、象徴化するわけでもなく人物像が浮き出されており、また彼らを見えない手として支持する60年代から70年代にかけての西ドイツの空気も自然に醸されていた。
過激な行動に走っていく娘の公判のあとで、記者の取材にこたえる上品で知性にじむ両親が戦後リベラルの風をごく自然に受止めていたり、第二世代のごく若いメンバーが無関係な人物を作戦ターゲットとして巻き込むことの多数決挙手の流れに逆らえなかったりする時、実社会の中で理想を追うことの難しさを考えさせられる。