カンディード

18世紀のリスボン大震災や奴隷制度、頻発する紛争など実際にあった苦難や惨劇をモデルにしているが、物語の基調はあくまで軽やかで朗らか。テンポよく青年カンディードの冒険が読み進められて非常に楽しい読書になった。性善説をめぐる考察にも一区切り付いており、全体バランスのよい長編小説になっている。訳者による註文が、まるで合いの手のようにヴォルテールの企図をつかんでいてそこがまたクスッとした笑いを誘う。